「起業の天才!」
皆さんこんにちは。販売促進課のKAです。
もう3月。少しずつ暖かくなってきた・・・のか?
今回は、最近読んで面白かった本の紹介をしたいと思います。できるだけネタバレを避けて。
「起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男」
大西康之 著 東洋経済新報社 発行 2,000円(税抜)
リクルートの創業者である江副浩正氏の生涯について綴ったノンフィクションです。
リクルート。恐らくこの会社名を耳にしたことがない人はいないのではないでしょうか?
あるいは「リクナビ」「SUUMO」「とらばーゆ」「カーセンサー」「じゃらん」「ゼクシィ」「Hot Pepper」「Air Pay」などはご存じなのではないでしょうか?これらは全部、同社の情報誌やサービスです。
また、一定以上の年齢の方であれば、「リクルート事件」を連想されるかも知れません。
もちろん本の中でも出てきます。
時代は高度成長期。リクルートは、1960年に「大学新聞広告社」として創業。
2年目には「企業への招待」(現「リクナビ」)を創刊し、世の中に拓かれた就職マーケットを創造。
ここから同社の快進撃は始まります。
様々な苦難を経ながらも、それをも糧にしてリクルートは勢いを失わず成長を続けます。
この辺りは読んでいて爽快な気分を味わえます。
情報を売るというサービスで様々な分野に進出し、成果を上げていくリクルート。
しかし江副氏はいつしかバブル経済とともにダークサイドに堕ちていきます。
「リクルート事件」の詳細については、あえて触れずにおきたいと思います。
リクルートが何よりすごいのは、事件を経ても潰れていないところではないでしょうか。
もちろん存続の危機ではあったし、役員の中には自己破産された方もいらっしゃいます。
それでも会社はなくならず、むしろさらに成長を続け、今や時価総額13兆円(日本4位)の会社となっています。
1989年に逮捕された江副氏の裁判は、実に13年もの時間をかけて行われます。
結果的に有罪判決となりますが、未だに冤罪だという意見も根強くあります。
江副氏はいわゆる「カリスマ経営者」ではありません。ご本人も自覚していると言っています。
すごいのは、「先見の明」と「採用狂ぶり」、「圧倒的当事者意識の醸成」といったところでしょうか。
中でもコンピュータと通信にいち早く注目し、1968年に日本企業で初めてコンピュータ「IBM1130」を導入したこと、1980年代にスーパーコンピュータを70億円分購入し、これらを「採用費」で計上したこと。
特に後者は理由を聞かなければ意味が分からないと思います。まだ「パソコン」なんていう単語がない時代の話です。
そして社員一人ひとりが「自分がこの会社を支えている」「俺がこのプロジェクトを作った」という気持ちで仕事をする。
そんな組織、そりゃ強いに決まってますわ。
1960年代に「モチベーション」をキーワードに組織を作った経営者。恐るべしです。
皆がベンチャー企業で皆が夢を持って皆が鼻息荒く仕事をしていた時代。江副氏はその中でもさらに異彩を放っていた人なのでしょう。
リクルートは今で言う「マッチング」の場や手段を提供する会社なのだと思います。
そして行き着くはずだった姿にいちばん近いのは、「Google」ではないでしょうか。
あの事件がなければ、リクルートは日本、いや世界のインターネットの巨大プラットフォームになっていた可能性は大いにあります。
また、リクルートを去って起業した方や、別の企業に入り大活躍する方も多く、「元リク」という言葉も生まれています。
日本の「失われた30年」の原因は色々あると思いますが、個人的には「バブル経済」「消費税導入」「リクルート事件」を挙げたいです。
事件の影響で江副氏=犯罪者というイメージが大きいですが、江副浩正という経営者の功罪について改めて知るのは、先の見えない&展開が早い今だからこそ意義があることではないかと思います。
この本、450ページほどありますが、サクサク読めます。
私は読み終わった時、好きな映画を見終わった時のような満足感と、一抹の寂寥感を覚えました。
ぜひ映画化して欲しいです。